日本代表 2019.08.29

ラグビーワールドカップに挑む日本代表 全31人選手名鑑 その4 【WTB・FB編】

9月20日に開幕するラグビーワールドカップ2019日本大会に向け、ついに日本代表31選手が発表された。「一生に一度」と謳われる地元開催のW杯で、前人未到のベスト8以上を狙うジャパン。その命運を託された31人のツワモノ達とは一体、どんな選手なのか。強さ最後はBKのポジションから、ウイング(WTB)、フルバック(FB)が主要ポジションの5人を紹介する。 ※ラグビーマガジン編集『ラグビー日本代表応援ブック』より抜粋・改変

ラグビーワールドカップに挑む日本代表 全31人選手名鑑 その4 【WTB・FB編】

松島 幸太朗 (FB/WTB)
「世界を駆け抜けるマツシマ」

生年月日:1993年2月26日生まれ  
年齢:26歳
出身地:南アフリカ出身
身長/体重:178㎝/88㎏
現所属クラブ:サントリーサンゴリアス

 22歳で臨んだ2015年のワールドカップは、WTBで全4試合にフル出場。同大会における日本代表でフル出場したのはリーチ マイケル、五郎丸歩と松島の3人だけという事実が、首脳陣の厚い信頼を物語る。2016年度、2017年度のトップリーグではサントリーの連覇の原動力となり、2017年度はMVPも獲得。今や、日本でナンバーワンの選手との声も多い。
 単純な速さだけでなく、瞬時にトップスピードに入る加速力と切れ味鋭いステップ、タックルを受けても簡単に倒れないボディバランスと、様々な能力を高い次元で兼ね備えている点が最大の魅力だ。1対1の局面で無類の強さを誇り、狭いスペースも難なく攻略して決定的な仕事をやってのける。
 本職はFBだが、WTBやアウトサイドCTBでも質の高いパフォーマンスを発揮できる万能性も、チームにとって大きな武器となる。今春のウルフパックのゲームでは松島がWTBに入り、ウィリアム・トゥポウがFBに回る布陣がテストされた。ダブルFBのような形で空中戦に強いトゥポウがハイボールの処理、ランニング能力に優れる松島はカウンターアタックと役割を分担するシステムは、ハイパントでプレッシャーをかけてくることが予想されるアイルランド、スコットランドとの戦いを想定したものだろう。
 高いプロ意識を持ち、将来的にはヨーロッパでプレーすることを思い描く。今回のワールドカップは、マツシマの名を世界に広める機会でもある。

山中 亮平 (FB)
「多彩なコースを狙えるキャノン砲」

生年月日:1988年6月22日
年齢:31歳
出身地:大阪府出身
身長/体重:188㎝/95㎏
現所属クラブ:神戸製鋼コベルコスティーラーズ

 185cmを超える長身にして多彩なパスワークと左右で長い距離を出せるキック力を兼ね備え、高校時代から従来の日本人BKのスケールを超える大器として将来を嘱望されてきた。早大4年時の2010年に初キャップを獲得するなど順調だった選手人生が一変したのは、神戸製鋼加入1年目。ドーピング違反で出場停止処分を受け、2年間ピッチから遠ざかった。
 復帰後も代表定着には届かない時期が続いたが、昨季SO/CTBからFBへと持ち場を移したことで、格別の才能が再び輝きを放ち始めた。神戸製鋼でトップリーグ優勝を遂げ、今季はサンウルブズでも活躍。前回のワールドカップは最終選考で落選しただけに、今大会にかける思いは誰よりも強い。

福岡 堅樹 (WTB)
「日本が誇るXファクター」

生年月日:1992年9月7日生まれ 
年齢:26歳
出身地:福岡県出身
身長/体重:175㎝/83㎏
現所属クラブ:パナソニック ワイルドナイツ

Xファクター。ひとりで局面を変えられる特別な能力を持った選手をそう呼ぶ。現在の日本代表のXファクターといえば、もちろん福岡堅樹だ。
 最大の魅力は圧倒的なスピード。ボールを手にするやトップギアに入り、相手を一瞬で置き去りにする様は、まるで一人だけ早送りで動いているように映るほど。かのエディー・ジョーンズ氏が日本代表のヘッドコーチを務めていた際、「チーターより速い」と評したのは有名なエピソードだ。
 初キャップを獲得したのは筑波大の2年生だった2013年4月のフィリピン戦。後半9分から途中出場し、ファーストタッチで約60mを走り切って初トライをマークする衝撃のデビューを飾った。同年6月にはウエールズから歴史的勝利を挙げたチームの一員となり、秋の欧州遠征でもマレーフィールドでのスコットランド戦で2トライをマーク。ワールドクラスの俊足を世界にアピールした。
 2015年のワールドカップイングランド大会は1試合のみの出場にとどまったものの、7人制日本代表として臨んだ翌2016年のリオデジャネイロ五輪では持ち前のスピードを存分に発揮し、予選プールでのニュージーランド撃破、準決勝進出という快進撃の原動力となった。単なるランナーではなく、カバーリング時の驚異的な戻りの速さやタックル後のすばやい反応からのジャッカルなど、ディフェンスでの貢献度が高い点も大きな武器。近年は攻守におけるポジショニングやパスの受け方などプレーの幅がさらに広がり、様々な面でジャパンにとって欠かせない選手になっている。
 祖父が医師、父は歯科医で、自身も将来的に医学の道へ進むことを志望し、高校卒業後は浪人生活を送った時期もあった。15人制は2019年のワールドカップ日本大会、7人制は2020年の東京五輪を区切りに引退し、ふたたび医学部を目指すことを明言している。この9月で27歳と、プレーヤーとしてピークを迎える年代でスパイクを脱ぐのはいかにも惜しまれるが、明確なゴールを定めているからこそ、そこまですべての力を注ぐことができるのもまた事実だろう。
 日本ラグビー史に残るフィニッシャーが桜のエンブレムを胸に疾走する姿を見られる機会も、残りわずか。いい形で福岡堅樹にボールが渡るシーンが増えるほど、ジャパンは勝利に近づく。自身2度目にして最後となる今秋のワールドカップでの走りっぷりを、しかと目に焼きつけたい。

アタアタ・モエアキオラ (WTB)
「国際クラスのクラッシャー」

生年月日:1996年2月6日生まれ
年齢:23歳
出身地:トンガ出身
身長/体重:185㎝/114㎏
現所属クラブ:神戸製鋼コベルコスティーラーズ

東海大2年時の2016年、U20日本代表としてU20世界選手権に出場。南アフリカとの初戦で衝撃の3トライを挙げ、元NZ代表の伝説的スター、ジョナ・ロムーの再来と言われた。その後は度重なるケガもあり国際舞台では思うような活躍ができなかったが、今季はスーパーラグビーのチーフスに加入し9試合に出場(3トライ)。パワーと高さのあるWTBを求めるジョセフヘッドコーチに抜擢される形で、日本代表のメンバー入りを果たした。
 185cm、114kgとバックロー並みのサイズに猛烈なパワーとスピードを備え、局面打開力は国際級。荒削りで未知数の部分は多いが、うまくフィットすればジャパンの新たな武器になる可能性を秘める。

レメキ ロマノ ラヴァ (WTB)
「駆け抜けるスピードスター」

生年月日:1989年1月20日生まれ
年齢:30歳
出身地:ニュージーランド出身(日本国籍)
身長/体重:177㎝/92㎏
現所属クラブ:Honda HEAT

 セブンズ日本代表で活躍し、2016の年リオデジャネイロ五輪でNZ撃破の立役者となった弾丸ランナー。セブンズではFWだが15人制ではWTBが持ち場で、2016年秋のアルゼンチン戦でテストマッチデビューを飾った。
 背筋をピンと立てた姿勢での高速ピッチ走法がトレードマーク。強力なハンドオフと急加速で狭いスペースをかいくぐり、一気にトライまで走りきれるスピードを兼ね備える。ボールを持った時の期待感は福岡と双璧で、ジョセフヘッドコーチも「Xファクター」と爆発力を高く評価する。
 強気で物怖じしない性格は大舞台向き。この男が快走するシーンが増えるほど、ジャパンは勝利に近づく。

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