2019.07.16
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任天堂はなぜ、最大の特徴を捨ててまで新型「スイッチ」を作ったのか

単なる“廉価版”ではない
渡邉 卓也 プロフィール

「ライト」の問題とこれからの未来

そもそも他のハイエンドPCや据え置きゲーム機と戦う場合、Nintendo Switchは明らかにパワー不足である。単純にゲーム機の性能がゲームの良し悪しを決めるわけではないが、正面からぶつかれば見劣りすることは間違いないだろう。だからこそ、任天堂のタイトルラインナップと携帯性を両立した独自の市場を開拓したというわけだ。

もちろん、ライトが発売されることによる問題もある。通常版はJoy-Conという特殊なコントローラーが付属しており、これがあることによって遊べるタイトルが、ライトでは楽しみづらくなるのだ(ライトでも別売りのJoy-Conを購入して接続できるが、やはりハードルがあがる)。

ダンボールで工作をすることによって新たなゲーム体験ができる『Nintendo Labo』シリーズに至っては、ライトでは遊ぶことができない。このシリーズは人気こそそれなりで落ち着いているが、エデュテインメントとしては大きな魅力があるため欠落するのは惜しい。

 

また『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』というタイトルでは、オンライン対戦をする際には安定する有線接続が推奨されている。しかしライトでは無線接続が基本になるため、こういったオンライン対戦ゲームの環境が荒れかねないという懸念もある。本作はeスポーツとしても注目を集めているわけで、その環境が悪くなることは歓迎しがたいだろう。

とはいえ、Nintendo Switchがより普及していくこと自体は多くの人にとって喜ばしいことだし、テレビに接続できる通常版が廃盤になるというわけではない。あくまでコアなユーザーとそうでないユーザーが線引きされる、という程度で済むだろう。

Nintendo Switchはライトが登場することにより、単なる据え置き機でもない携帯機でもない、“任天堂独自のゲーム機”という立場がより明確にされていくはずだ。そして、それこそ本当に「1人1台」の時代が来るかもしれない。

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