ガンダムにザク、グフ、ドム…。昭和54(1979)年にテレビで放送され、今年35周年を迎えた「機動戦士ガンダム」は、主人公の搭乗メカを始め、数々の敵役メカなどの傑作を生み出した。これらメカのプラモデルはガンプラと呼ばれ、国内外で累計4億個以上を販売、今も次々と新製品が作られている。「子供向けの玩具ではない、大人も夢中になれるメカをデザインしてほしい」。この富野由悠季総監督(72)の高い要求に応えたのが、人気アニメ「科学忍者隊ガッチャマン」で敵メカのデザインを担当した新進気鋭のメカニック・デザイナー、大河原邦男さん(66)だった。シリーズ第3回に登場するのは大河原さん。
私の脳の中にCADが入っている
富野監督、キャラクター・デザイナーの安彦良和さん(66)、そしてメカニック・デザイナーの大河原さんの3人の自伝的漫画『「ガンダム」を創った男たち。』に登場する大河原さんは、工員のような帽子、つなぎ姿で描かれ、まるで町工場の頑固な工場長のようなキャラクターだ。
これはもちろんデフォルメされ、ユーモラスに描かれた想像上の姿。実際の大河原さんは、おしゃれで物静かな紳士だ。だが、ペンを片手に机の前から離れないデザイナー-というイメージの枠にはおさまりきらない、たくましい創造性と好奇心に富んだ大河原さんの内面の姿を、大和田さんは町の工場長というキャラクターで的確に表現していることが分かる。
昨年、大河原さんの東京都内のアトリエを取材で訪れた。アトリエの隣には通称「大河原ファクトリー」と呼ばれる工房があった。旋盤など数十種類の本格工作機械がずらりと並び、ここで大河原さんは自分でデザインしたメカを立体の造形物に仕上げていた。